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リファラル採用
[リファラルサイヨウ]

「リファラル採用」とは、自社の従業員に採用候補者を紹介してもらう採用方法のことをいいます。縁故採用やリクルーター役の従業員が外部から候補者を呼んでくる採用方法と似ていますが、リファラル採用では知人や友人など、すべての人が採用候補者になり得ます。近年、企業の人手不足感が続いており、新しい採用方法として注目されていますが、安易な運用は法律に触れてしまうこともあります。

1. リファラル採用と縁故採用との違い~リファラル採用とは?~

リファラル採用と縁故採用は、どちらも従業員のコネクションに頼って応募者を募ります。そのため、リファラル採用は、縁故採用をカタカナで現代風に言い換えられたものだと思っている人もいるのではないでしょうか。しかし、両者を混同すると企業に悪影響をもたらす場合もあります。縁故採用とリファラル採用の違いは、次のような点にあります。

まず、その言葉が持つイメージの違いです。リファラル採用は、自社で実力を発揮できそうな知人や友人を従業員が紹介し、採用試験や面接を経て採用するイメージ。一方、縁故採用は、実力は関係なく紹介された従業員の身内を優先的に採用するイメージ。そのため縁故採用には、実力が伴わない人材でも入社できてしまう印象があります。

リファラル採用は従業員が声をかけたのち、候補者として選考過程を経て採用されます。一般採用よりは確率が高いものの、採用率は20%程度というデータもあります。つまり、リファラル採用は候補者の実力を測る機能も持っているのです。

また、縁故採用は一般に企業が正式に承認した採用方式ではありませんが、リファラル採用は正式な採用方式です。そのため、業務の一つとして行われるケースも多いのです。

リファラル採用が注目されてきた背景

リファラル採用が注目されている背景には、少子高齢化による人手不足や、有名企業の積極的な導入があります。導入の目的は、従業員の定着率向上。サイバーエージェントやメルカリなどのメガベンチャーが導入していることも知られており、エン・ジャパンの調査によればすでに6~7割の企業がリファラル採用を行った経験があるとされています。

「リファラル採用(社員紹介)意識調査 62%の企業がリファラル採用の経験あり。実施理由は、定着・活躍のしやすさ。―人事担当者向け 中途採用支援サイト『エン 人事のミカタ』アンケート」より引用

多くの企業が、ミスマッチによる従業員の早期離職という問題を抱えていますが、リファラル採用制度を導入することでミスマッチのリスクを抑えることができることも、導入が進んでいる理由の一つでしょう。リファラル採用では業務内容をよく知っている従業員が、その業務に合う人を候補者として推薦する傾向があり、入社後のミスマッチも起こりにくいのです。

リファラル採用のメリット・デメリット

リファラル採用の主なメリットは以下の通りです。

  1. 採用コストを削減できる
  2. 採用者の定着率が高い
  3. 候補者の母集団の質が高い

特に中途採用者の場合、採用にかかるコストは高くなる傾向があります。リファラル採用でも飲食費や対応する従業員の残業代など一定のコストがかかる場合もありますが、人材紹介会社を経由した中途採用費用などと比べると、金銭的、時間的コストがかなり低くなります。

また、自社をよく知る従業員が候補者を紹介するため、通常の中途採用と比べて母集団の質が高くなる効果や、自社の魅力を多くの人に伝えることができるメリットもあります。副次的な効果として、従業員が自社にどのような人材が必要かを考える機会も増え、経営者視点で自社のことを考えるようになる点もメリットといえるでしょう。

一方、デメリットは以下の点が挙げられます。

  1. 候補者が偏る可能性もある
  2. 大量採用には向かない
  3. 社員に負荷がかかる

リファラル採用は、従業員のつながりで候補者を紹介してもらうため、どうしても似たような思考の持ち主が増えやすくなる傾向があります。イノベーションを起こすには、異なる価値観の持ち主同士が集まることが重要だとされます。そのため、リファラル採用だけで従業員を形成することには注意が必要です。

また、候補者が従業員の知り合いに限られるため、大量採用には向かないのもデメリットといえます。また、人事評価に候補者を連れてくることが含まれている場合は、知り合いが多い人とそうではない人とで評価に差が出てしまい、不満のもとになりかねません。

リファラル採用は、採用活動の一部を従業員に任せることでもあります。本来の業務に加えて、採用業務が増えることになるため、注意が必要です。従業員が本来の業務で多忙な場合は、リファラル採用の効果は出にくいかもしれません。推進する際は、従業員のモチベーションアップにつながるようなインセンティブなども検討する必要があるでしょう。

2. リファラル採用の実務

リファラル採用を行う際に、どのような実務を行うのかを見ていきます。

リファラル採用導入の一般的な流れ

縁故採用と異なり、リファラル採用は会社の明確な人事戦略の一つです。そのため、従業員にリファラル採用の候補者をあげるように依頼する場合は、それが業務の一つであるのかそうではないのかを明確にする必要があります。リファラル採用を通じて候補者の採用が決定したら、紹介した従業員にインセンティブを出している企業もあります。その場合は就業規則などにその旨を記載します。

さらにリファラル採用を導入する場合は、どのような人材が必要なのか、その後の採用方式はどうするのかを決定しなければなりません。また、候補者を紹介した従業員の人事評価、候補者が不採用だった場合の従業員フォローなども決めておく必要があります。従業員規模が大きい企業では、全社で一気にリファラル採用を導入するのではなく、求める人物像が明確な部門やグループでテスト導入ののち、全社に導入するケースもあるようです。

選考から採用までの流れとしては、従業員が候補者を推薦する以外、多くの場合は通常の中途採用と同様の流れだと考えてよいでしょう。ただし、企業によっては書類選考を行わない場合やリファラル採用独自の選考フローを用意している場合もあります。

正しく行うリファラル採用~リファラル採用を行う際の注意点~

リファラル採用で注意する必要があるのは、それが「適法」かどうかです。

リファラル採用が違法になる場合

リファラル採用は、法的には従業員に「委託して」人材の募集を行うという制度です。そのため、それを業務とせずに行う場合は、厚生労働大臣の許可を得て、届け出をしなければなりません。

反対に、業務とする場合は許可や届け出の必要はありませんが、給与やそれに準ずるものを超えて「報酬」を与えることはできません。どの程度の額が適当かの基準は明確にはありませんが、業績アップ時の特別手当や、賞金程度の額であれば問題はないでしょう。給与と同等の額など、あまりに高額となる報酬を出した場合は、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられる可能性があるので注意が必要です(職業安定法65条6号)。

報酬・インセンティブ設計

報酬やインセンティブを設計する場合、報酬をどの時点で出すのかを考慮する必要があります。採用された時点で支払うのか、試用期間が終了して本採用となった時点で支払うのか。あるいは、紹介した時点で支払うのかなどは、従業員のやる気を高める上で重要な要素です。これらの設計は「母集団形成」「ミスマッチ軽減」など、リファラル採用の導入目的で変わります。また、部署ごとに目標となる人数を決めて、報酬ではなく部署ごとの飲食費という形で支給することもあり得ます。

候補者を推薦するという行為が、人事評価につながるかどうかを話し合ってく必要もあります。人事評価につながる場合は、人脈がない従業員のやる気を下げることになる一方で、採用戦略としてはより多くの母集団を獲得することが見込める可能性が出てきます。ただし、リファラル採用が人事評価で重い比重を占めると、本業に力を入れなくなる従業員が出てくる可能性もあるため、注意が必要です。

就業規則にはどう盛り込めばよいか

リファラル採用を従業員の業務として扱う場合、その旨を就業規則に記載する必要があります。就業規則には、リファラル採用が業務の一環であること、また、それによってどの程度の報酬が得られるのかを盛り込む必要があります。上で述べたように、どの時点で報酬が発生するかも記しておいた方がよいでしょう。

さらに、従業員が社外で候補者と会う際にかかった必要経費を企業が負担するのか、勤務時間外の活動であれば残業代を与えるかなどの細かな点も規定しておきましょう。どのような制度にするのかは企業ごとの判断になりますが、内容を明確に示さなければ従業員としてはリファラル採用活動に乗り出しにくいでしょう。

3. リファラル採用を成功させるために

リクルートキャリアによる調査には、リファラル採用を成功させるためには、企業側が十分な情報発信を行っていることが重要だとされています。

インターネットなど、すぐに見られる形で自社の情報が開示されていない場合、従業員も候補者に自社を勧めにくく、候補者も応募しにくいようです。そのため、リファラル採用を成功させるには、まず自社の情報開示がしっかりと行われているか、Webサイトなどで自社の魅力を正しく伝えられているかを確認する必要があります。

最近では、リファラル採用をサポートする企業や、専用のツールも出ています。採用のコストをどれだけにするのか、その中でいかに効率よく人材を確保するのかについて、戦略的に考えることがリファラル採用を成功させる上で大変重要です。

企画・編集:『日本の人事部』編集部

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