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これからの「ソーシャルリクルーティング」

多くの企業が注目しはじめたソーシャルリクルーティング。その可能性と将来について3人の識者にコメントをいただいた。最初は、人材業界出身でソーシャルメディア・コンサルティングを手がける株式会社ループス コミュニケーションズのディレクター加藤健さん、続いて本稿でも紹介したアイティメディア株式会社の人事担当部長でソーシャルリクルーティングの全面導入を成功させた浦野平也さん、最後に株式会社インテリジェンス マーケティング企画部 三石原士さん。それぞれ独自の三つの切り口から、「ソーシャルリクルーティングのこれから」を読み取っていただければ幸いである。

ソーシャルリクルーティングのこれから ~ミニインタビュー~

加藤 健さん(株式会社ループス・コミュニケーションズ ディレクター) ソーシャルメディアが生む「P2P」の関係が
よりハッピーなマッチングを生んでいく
加藤 健さん(株式会社ループス・コミュニケーションズ ディレクター)

---今後のソーシャルリクルーティングはどう展開していくと考えられますか

新卒採用の現状で何が問題になっているかというと、本来の「就職」ではなく、中身の見えない企業というハコへの「就社」になってしまっていることではないでしょうか。その原因は、企業側からは良い部分しか見せない情報提供が依然として当たり前になっていること、学生側も企業の本質を見ようとせず、人気企業に集中していることなどが考えられます。その結果として、「こんなはずではなかった」というミスマッチや早期離職の問題が生じています。

ソーシャルリクルーティングは、こうした新卒採用の課題に一つの解決策を示すものでしょう。ソーシャルメディアは、「学生と企業」ではなく、「学生と企業の中の一個人」のP2P(Peer to Peer)のコミュニケーションを可能にしました。さらに、情報の受け手と発信者が対等の関係になるため情報のコントロールは不可能になります。こうした透明性の時代だからこそ、たてまえの情報だけで採用・就職するのではなく、ソーシャルリクルーティングを活用することで本質的な部分で相互理解を深め、結果として企業・学生双方にとってハッピーな就職へとつながるでしょう。

今はまだIT/WEB系の業界を中心に、話題作りの上手な企業が成功している印象のあるソーシャルリクルーティングですが、今後導入する企業数は確実に増えていくでしょう。ただし、すべての新卒採用をソーシャルリクルーティングで賄うというよりは、経営企画や新規事業開発、海外部門など、ビジネス志向の強い人材が求められる部署の要員を採用するために別枠で使うといった流れになっていくのではないでしょうか。 こうした部署は、特に優秀な人材を厳選採用するわけですから、入社後は最大のパフォーマンスを発揮してもらわなくてはなりません。そのためには、深い企業理解と仕事に対する高い共感性が求められるわけで、まさにソーシャルリクルーティング向きの採用といえるのではないかと思います。
(取材日 2011/8/5)

浦野平也さん(アイティメディア株式会社 人事担当部長) 採用の定義、考え方をソーシャルなものに
ベースになるのは自社の事業戦略
浦野平也さん(アイティメディア株式会社 人事担当部長)

---新たにソーシャルリクルーティング導入を検討する場合、何が大切でしょうか

自社の採用活動に「ソーシャル」を組み込むべき必然性について、人事が明確に理解できているか、ということに尽きるとと思います。私どもアイティメディアの場合、これからの事業戦略を推進する人材層に的確にアプローチし、採用にまで繋げるためには、一般の就職サイトではなくソーシャルメディアを使うことが必要だと考えました。そしてその採用戦略に集中するため、ソーシャルリクルーティングの全面導入にいたりました。しかし、従来型の採用をベースにしつつ、説明会や初期の情報提供だけソーシャルメディア上で行うといった限定導入のスタイルもありうると思います。重要なのは、自社の事業戦略と採用手法の間に齟齬がないこと。 特に新卒採用は戦略を先取りする必要があると思いますが、利用する理由を明確にしたうえでツールやその使い方を判断することが大切だと思います。

その上でソーシャルメディアを採用活動に使う場合、そこは情報の送り手が優位に立つ従来型のメディアの世界ではなく、送り手と受け手が対等な世界だということを十分に留意しておく必要があります。例えば、ソーシャルメディア上では、企業が見せたい情報だけを見せ、不都合な情報は隠す…といった一方的なコントロールはできないと思ったほうがいいです。情報をコントロールしようとする姿は露見しやすいので、受け手からの信頼感や親近感を得ることは難しいでしょう。結果として、企業と学生がお互いの共感ポイントを探り、満足度の高い採用を実現するというソーシャルリクルーティングの本来の目的を果たすことはできません。

ソーシャルリクルーティングを行うからには、答えにくい質問にも真摯に対応する。そういった姿を見てもらって初めて信頼関係が生まれます。同時に、地道にこの作業を積み重ねていけば、そのやりとりを見ていたその他の参加者によって、良い評判や信頼がどんどん拡散していくはずです。そうなると、いわゆるクチコミで、優秀な人材が自社に興味を持ち向こうからアプローチしてくる…といった状況も増えてくるでしょう。 ただ新しいツールを使うということではなく、採用の定義や考え方自体をソーシャルなものに再設計すること、これこそがソーシャルリクルーティングの本質だと私どもは考えています。
(取材日 2011/8/10)

三石原士さん(株式会社インテリジェンス マーケティング企画部) 長期的キャリア形成にも有効性は高い
新卒採用の形を変えるポテンシャルを持つ
三石原士さん(株式会社インテリジェンス マーケティング企画部)

---ソーシャルリクルーティングは、日本の新卒採用にどんな影響を及ぼしそうですか

今、ソーシャルメディアを使ってキャリアやネットワーク志向の活動をしている学生たちを見ていると、使っていない学生との間で、明らかにコミュニケーションレベルの違いが感じられます。言いたいことがはっきりしていますし、それを伝えるための言葉の選び方も的確。社会人との対話に慣れている印象です。

こういう学生たちは「さあ就活だ」ということでソーシャルメディアを使い始めたわけではありません。学業でずっと使っていたという場合もありますが、NPOのような社会人も交えての活動に、1~2年生の頃から参加していたようなケースが多い。そういった活動を通して、自然に社会人の考え方や組織とのつきあい方を学んできているわけです。ですから、就活にあたっても、それなりの社会的影響力のある人から「推薦状」などをもらえるようなネットワークも出来ている。

つまり、ソーシャルリクルーティングとは、採用する側もされる側も、長期的に取り組んでこそ、その真価が発揮される採用手法だといえるでしょう。学生は就活が始まる前から、さまざまな人との交流を積み上げて、ソーシャルメディア上に自分独自のコンテンツを築いていかなくてはなりません。また、採用側はそういった学生の動きを早い段階からフォローし続けていないと、優秀な人材は採れないということになります。人事にも「攻めの営業」の感覚が必要になります。これらが定着してくると、就活の時期が来たからいっせいに動く…というのではなく、長期的にキャリアを考えていく風土が、人材の側にも企業の側にも育ってくる可能性があるのではないでしょうか。

ただ、今後、新卒採用のすべてがソーシャルリクルーティングになっていくということは考えにくいと思います。しばらくはIT/WEB系の業界、あるいは中小/ベンチャー企業が中心で、広がるとしても、大手企業が特別枠でハイレベルな技術系学生を採用する場合や厳選採用の外資系企業などではないでしょうか。 その一方で、中途採用へのソーシャルリクルーティングの導入は急速に進んでいます。ソーシャルメディアのアカウントには就職後のキャリアや人的ネットワークも刻まれていきますから、それをフォローし続ける企業も増えるでしょう。つまり、新卒採用と中途採用がシームレスにつながる時代がすぐそこまで来ていると思います。
(取材日 2011/8/10)

今後のソーシャルリクルーティング

ソーシャルリクルーティングの今後を考える上で、注目すべき点が「中小企業の参入」と「企業以外の発信」である。

中小企業の参入

ソーシャルリクルーティングは知名度のある大企業だけのものではなく、中小企業にも広がりつつある。その代表例がWantedlyで、決算資料によれば、従業員数100名以下の企業がWantedlyの主要な利用者となっている。情報感度の高い学生を中心に閲覧されているため、企業の情報発信によっては入社検討につながる可能性を持っている。

企業以外の発信

ソーシャルリクルーティングにおいては、企業「公式」の情報発信だけではなく、企業以外の発信によるものを忘れてはならない。電通PRの調査(図表15)によれば、「ソーシャルメディア(企業・社員のアカウントは除く)」が入社を決めた企業に魅力を感じるのに役立った情報源だと回答したのは21.1%に上り、「新卒採用SNSアカウント」の2.8%や、「企業・社員のソーシャルメディア(採用専門アカウントは除く)」の1.5%を大きく上回る数値となる。

この結果から、企業側のソーシャルメディアによる情報発信に直接魅力を感じることは少ない、ということができる。企業側にできるのは、ソーシャルメディア上の自社の評判に注意を向けて学生が知りたい情報を察知し、丁寧に発信を行っていくことだろう。学生が自発的に自社のよい情報を発信していくことを目指して、地道な取り組みをしなければならない。

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企画・編集:『日本の人事部』編集部

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