入社早々トラブル軽減のために:選考時の障がい/疾病情報の活用
ここ数年で障がい者の新規採用は、精神障がい者に置き換わっていますが、
選考ミスマッチによって、入社早々にトラブルが多発するケースが少なくありません。
「採用時の業務スキルの想定と実際にギャップがあり、チームに負荷が掛かっている」
「面接時のコミュニケーションは問題なかったが、配属早々から上司の指示に従えない」等
障がい者本人の不具合だけでなく、部署や上司の負担が大きい状況が散見されます。
このような状況が続く場合、
離職する障がい者の増加や部署の新規受入れ拒否につながる可能性があるため、
選考時に障がいや疾病に関する情報を十分に活用し、
見極めの精度を上げることが大切です。
なぜ、面接官(採用担当者や現場の部門長)は、
障がいや疾病に関する情報を上手く活用できないのでしょうか。
障がい者の雇用(採用/定着)を成功させるためには、
・ 得られた情報から障がい/疾病の内容や程度を適切に理解すること
・ その状態を、健常者や他の障がい者の事例と比較すること
が必要であり、そのための情報収集としては、
① 障がい者本人から情報を得る
② 第3者から情報を得る
という2つの手段があります。
一般的に、②の第3者は候補者の支援者や支援機関であることが多いため、
採用選考時の情報収集の観点からは②のみでは不十分で、
①と②を組み合わせて、多角的に情報を得ることが大事です。
しかし、障がい者の対応に慣れていない面接官にとっては、
①の情報収集は難易度が高い状況で、
特に精神障がい者の選考面接では、必要な情報を上手く引き出すことができず、
情報の信頼性が下がる傾向にあります。
精神障がい者の課題として、
障がいの自己認識が弱い、コミュニケーションスキルが足りないということがあります。
これらの課題は障がい特性に由来しているため、
医療機関や就労支援機関等で自己理解のトレーニングによって
受容できている人もいますが、
全ての人が自分の特性について十分に受容できている状態ではありません。
また、自己受容ができていたとしても、
自分の特性や対処について他者に上手く説明できるかどうかは別の問題であるため、
このような課題があることを前提に、
面接時には情報を引き出す工夫をしなければなりません。
センシティブな情報(健康状態や病歴等)の取り扱いを意識しながら、
限られた時間で込み入ったところまで確認するには、
心理的な問題を抱えている人に対する心理面接のスキルが必要です。
これら一連の採用選考を上手く実施するためには、
障がい/疾病に関する専門知識を持ち、
多くの障がい者に関わった経験のある人材が面接官を務めるか、
そういった人材が面接官をサポートする必要があります。
そのような人材が自社内にいない場合は、外部を活用して補うことで
結果的に、選考ミスマッチを防ぐとともに
入社早々のトラブル軽減につながるものと考えます。
(シニアコラボレーター 諏訪 裕子)
キューブ・インテグレーション株式会社 シニアコラボレータ― | |
公認心理師/臨床心理士/シニア産業カウンセラー
【専門領域】障がい者雇用の企業支援、精神障がい者の採用・定着・育成支援 精神科・心療内科クリニックにて、医師との協働で会社員のメンタルヘルス相談等に関与。EAP事業会社にて企業のメンタルヘルス支援に従事。現在は、企業の人事部門に対する障がい者雇用のコンサルテーション、精神障がい者の現場管理職・本人支援を実施。 |
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