デジタル世代の新人育成のヒント(5)
今回はデジタル世代の思考法について考えてみたいと思います。
デジタル思考:その1「失敗は取り返せない」
デジタル世代は1980年以降のIT革命による生活環境の激変の最中に育っています。そして、90年のバブル崩壊までは東北・上越新幹線開業、国鉄の民営化や東京ディズニーランド開園と産業のサービス化が進展し、任天堂からファミリーコンピューターが、マイクロソフトからウィンドウズが発売されるなど90年代の情報産業の時代へと続いていきます。そして、90年にバブルが崩壊し、2000年代後半にはリーマンショックと二度の景気後退局面が発生します。この間成長率は2%前後で最近ではマイナス成長という時代に育ったデジタル世代が失敗を恐れるのも無理からぬことかもしれません。
デジタル思考:その2「成功するために必要なのは、その方法を知ること」
低成長下では、社会全体が失敗を恐れるようになります。少子化と相まって、親が子どもの失敗リスクを軽減しようして”転ばぬ先の杖”を先回りして準備する形で育ててきたのがデジタル世代です。学校や塾、予備校も子供を”お客様”扱いで、充実した教材を用いて手とり足とり育てます。そうした環境からは、自分の行く先は常に誰かが準備をしてくれているという期待を抱かせてしまうでしょう。試行錯誤の結果として成功があるのではなく、成功するには、そのためのマニュアルがあるのが当然だと考えているのです。
デジタル思考:その3「ルールは決められているもの」
先に述べたように遊びの中でも大きな変化がありました。電子ゲームの登場です。電子ゲームでのコミュニケーションには、既め決められたルールがあります。ルールを自分達で作ったり、変更したりしません。ルールは与えられるものなのです。
デジタル思考:その4「壊れたら取り替える」
加えて電子ゲームに代表されるデジタル時代のおもちゃは、自分で修理することができません。「壊れたら直す」のではなく「壊れたら取り替える」価値観が形成されることが懸念されます。「職場が自分に不適合」と判断した新人は、双方が適合できる形に変える努力をする前に、職場を変わってしまいます。
デジタル思考:その4「情報は獲得するものではなく、与えられるもの」
コミュニケーションに関してはSNSを駆使して、特に同世代間では頻繁なやりとりができる反面、年長者とのコミュニケーションについては、生活の中での情報化・機械化の進展によりその機会が減っています。それは同時に、商品や情報との接点も少ないことを意味します。人を介在して得られる情報や実際の商品を見ることで得られる情報を自分で吸収収集できません。机の前に座って、検索して得られる情報は「現場・現物・現実」とはほど遠い世界です。情報までもが自分で獲得するものではなく、与えられるものとなっているのです。
デジタル思考:その5「判断の基準を外部に委ねる」
自分で見たり聞いたりしないで情報や商品を取捨選択するのですから、判断の拠り所を他者に求めることになります。以前、学生に「何を頼りにネットでものを買うの?」と聞いたら「ランキングですかね」と言っていました。情報の受け手として過ごす時間が長くなれば、情報の取捨選択すなわち判断の基準さえ受け手になってしまう懸念がここにはあります。
このように大きく思考のパターンが異なるアナログ世代がデジタル世代を育成する、という想定に立つとき、自分が育った時と同じ感覚で育成することは相当難しいことが理解できるのではないでしょうか。次回はそのための処方箋、ヒントを書きたいと思います。
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